残穢-住んではいけない部屋-
「原作と比べて出来はどうなのか?」
原作がある映画の場合、このように思う人は決して少なくないだろう。
自分は、そもそも原作本と比べるべきではなく、原作を基に作られた映画は、原作とは別の作品と捉えるべきである、といつも考えている。
原作を知る人には、それぞれの頭に思い描く世界観があり、特に視覚に明確に訴えるものが提示されていない限り、その世界は十人十色の規模に拡がる。
思い入れはあっても、原作を知る映像のプロによって命を吹き込まれた、限りなく別の作品として楽しむのがよいと思うのだが、いかがだろうか?
さて本作も類に違わず、文芸界において受賞歴のある小説が原作の映画作品であるが、原作を未読の私個人としては、本作を観て十分に背筋をぞくぞくさせてもらった。
特に、決して奇をてらうことなく、不可思議な現象を丁寧に映像として積み上げていく展開が物語に緊張感と恐怖感をみなぎらせており、ある種の心地よさを覚えた。
正直のところ、監督に尋ねたくなるシーンがないわけではない。
それにも関わらず、本作はホラーという分野に止まらず、2016年の佳作の1本として是非鑑賞をお勧めしたい。