沖縄で想う、近未来の飲み物のこと
旅へ出る時、
多少なりとも決めていく目的のうち
必ず調べてくるのは現地の珈琲事情だ。
珈琲事情と書いたが、
要は珈琲そのものの風味や、
珈琲を提供する喫茶店の雰囲気、
心血を注ぐ人々のことであり、
旅先で体感するそれらは日常よりも強く印象が残る。
今回15年ぶりに沖縄本島へ行くにあたり、
インターネットを通じて
沖縄の珈琲事情について浅い検索をしたところ、
自分の想像とは違った
非常に興味深いことが
好奇心の網に引っ掛かってきた。
それは、沖縄がコーヒーベルトの北端に位置しているということである。
コーヒーベルトとは
珈琲の栽培に適した地域の総称で、
詳しくは下図を見て頂きたい。
(出典: AGFホームページ「コーヒー大事典」)
珈琲豆は輸入されるものという意識が強く、
そもそも日本で育てられるとは考えたことがなかっただけに、
ベルト情報を知った時は
不思議なもので胸の高鳴りを覚えたほどだ。
この情報と共に、
沖縄旅での楽しみを増やしてくれたのは
友人から送られてきた1通のメッセージだった。
「珈琲の仙人に会ってみますか?」
友人のいう仙人とは
ひとつのことを極限まで究めようとしている人のことであり、
達人や職人と同じであると勝手に解釈している。
珈琲事情にまつわる人の話を聞けるのは、
どんなに有益な情報が書かれたガイドブックよりも今の自分には有益である。
充分な程の意気込みだけは持ち、
週末のほんの束の間、羽田から那覇へ向かった。
到着翌日の午前中、
降る雨が時折窓ガラスを激しく叩く中
国道58号線を車で北上し、
本島中部に位置する恩納村にある
ファーマーズマーケットおんなの駅へ。
週末にしか店を出さない
まるい珈琲の主こと「珈琲の仙人」と
少しの時間ながら話すことができた。
特に印象的だったのは、
非常に楽しそうな笑みを湛えながら
お話をしてくれたことだ。
仙人は元は珈琲の栽培をしていたが
台風の被害により諦めざるを得なくなり、
珈琲豆の焙煎および販売に舵を切ったとのことで、
沖縄の珈琲事情について以下の通り語ってくれた。
●珈琲栽培は行なわれているが、小規模で生産量が少ない。
●沖縄産の珈琲を飲むことは沖縄にいても難しい。有名なホテルでありつけることもある。
●寒暖差が小さい気候の為、味の点では珈琲栽培に最適の土地ではない。
●第三世代の担い手が登場してきており、今後の変化に期待している。
全体として沖縄の珈琲栽培に関して厳しいお言葉が並んでいたが、
どこにも真似できない味の珈琲を提供する信念があるが故で、
尋常ならない珈琲への愛情を感じた。
今回、沖縄への旅は僅か2日と短い期間であったが、
非常に密度濃く過ごせたと思っている。
頭で知りたかったことを、
現地へ行き、現地の人と話して肌感覚で知ることができたからだ。
沖縄と珈琲との物語はこれからも続く。
沖縄産の珈琲を沖縄で気軽に飲む。
その日は、遠くない未来かもしれない。
※写真は、まるい珈琲で購入した3種類の珈琲。
仙人のお店では沖縄産の珈琲豆は取り扱っていません。悪しからず。